「京都一ファンキーな不動産屋」を名乗る川端寛之さん。前編ではそのファンキーな横顔をご紹介しました。後編では、不動産屋さんになったきっかけや右下のどのあたりかに迫ります!
ラブレターを書いて就職成功!?
——不動産屋さんになったのはどういう経緯なんですか?
川端: いいこと聞いてくれま・・・せんねぇ、それ(笑)。
——え? 聞いちゃダメでした?
川端: 新卒で入って長いこと勤めてた会社がたまたま不動産だったってだけなんですよ。就職活動当時、事情があって転勤のない会社を探してたんですけど、就活をイベントっぽく感じちゃって、全然真面目にやってなかったんです。集団面接のディベートを真面目にやってる他の学生を見てつい笑っちゃったり、「ところで、社長にはいつ会えるんですか?」とか聞いてみたり、絶対やったらあかんことを色々してて(笑)。だから、もちろん全部落ちて、決まんなかったんですよ。
——その頃からファンキーだったんですね(笑)。
川端: いや、大学時代は遊びと恋愛ばっかりしてたので、実は一番の目標は「サラリーマンになって普通の生活がしたい!」だけだったんですよ! なので、前の会社は、実は一回落ちた会社だったんですけど、“ラブレター”を書いたら、就職できたんです。
——ラブレター!? へぇ!! 社長に?
川端: はい、社長に。そしたら、「一回会うたろう!」って言ってもらえて。
——すごいじゃないですか! それで入れたんですか!?
川端: でもね、そのラブレターに気持ちを全力で出し切ってしまったので、実際に会ってもらえた時にはもう自分の中にもう言葉が残ってなくて……「あれ? 何も言えねぇ!」みたいになっちゃって(笑)。社長も「おー! 来たか!……あれ? 手紙の熱量すごかったけど……キミ、なんか、あんまりやな」みたいになって(笑)、それでも採用していただけて……という始まりでしたね。
——まさに文才を活かしての就活だったんですねぇ! 川端さんらしいエピソード!
川端: だから、今、独立して、なんで不動産業をしてるかと言うと、不動産業しかできなかったからですね。何でもよかったんですけど、世の中や自分の周りの人に、自分が必要としてもらえることって、不動産業しかないなと思っただけの話です。
「文章を書くことは昔からお好きだったんですか?」と尋ねたところ、「そうですね、20歳くらいの時から、眠れない夜にポエムとかよく書いてましたね」とのお返事。
“リアルさ”を求めて独立 味わったヒリヒリ感
——独立することになったきっかけはなんだったんですか?
川端: 会社にいた時に「京都トンガリエステート」っていう、“不動産のセレクトショップ”みたいなサイトを立ち上げさせてもらったんですけど、その仕事ぶりを見たうちのヨメさんから提案されたことですね。「うちは、あんたの可能性に賭けたいんや」って言われまして……これはプロポーズやなぁ!と思ってね、思わず避けましたよね(笑)。とっさに、ひょいっと。
——プロポーズに感動して一念発起した……って話じゃなくて、避けたんですか!?(笑)
川端: 避けたんですけど、そこから1年くらい、そのプロポーズ的な言葉が家の中をずっと飛んでたみたいなんですよね(笑)。で、何かのタイミングで結局「ぷすっ」と刺さりまして。家族会議をして、やっぱり独立することにしました。
——飛んでたって……(笑)。
川端: 不動産のサラリーマンって、売上と件数なんですよね、どこまでも。1ヶ月終わるとリセットして、また売上と件数を稼ぐ、の繰り返し。1年終わるとまたリセットして、ずっとそれ。僕はもともと将来の夢とかあったんですけど、そういう仕組みの中に入ることで、目の前の事をやれなくなることが出てくるんですよね。だから、中途半端に夢持つのはやめようと思って、サラリーマン生活13年間のうち後半8年くらいは、夢を持たないようにしてました。1年間生きる目的と目標は、売上と件数だけっていう生活をずっとしていたんですよ。
——自分でそう決めたかどうかは別として、そういう生き方になってる人はたくさんいると思います。
川端: でも、「京都トンガリエステート」をやり始めてから、会社の枠からちょっとだけ、頭が出たんですよね。あえて会社の名前がわからないようなやり方でやらせてもらってたんですけど、意外とお客さんも来て、リアクションや喜びもリアルなやつがきたんですよ。そのリアルさを、さらに求めたかったというか。自分の足で、会社にいた時と同じ高さに立ちたいってのが、独立する時の目標でした。
「東京R不動産」などのこだわり物件を紹介する不動産サイトは、東京では2000年代前半には出始めていたが、「京都トンガリエステート」の前身だった“不動産のセレクトショップ”「セレクト京都」は、会社のHPの隅にひっそりリンクがあるだけの、目立たない、問い合わせもなかなかないサイトだったそう。「『こういうのは、京都ではまだ早過ぎるのか?』と思ってましたね」と川端さん。
——独立してみて、その「リアルさ」は実際どうですか?
川端: 自分の会社をつくるのに、免許とかでけっこうお金かかるんですよ。調べずに独立したもんだから、その時に、個人の貯金がなくなってしまって、まぁ会社のお金があるから大丈夫だったんですけど、そこで「一旦、お金からちょっと離れよう」って思ったんです。ずっとお金のためにやってきたから。「ほんまにやりたいことだけ、やってみよう」と決めたんです。
——それは、すごい。
川端: そしたら、1年半くらい経った時に、会社のお金もなくなって……。
——ひぃ~っ!
川端: 「来たなあ、シビれるなあ」って思いましたね。そのリアルさに。「そんなにうまくいかへん」ってのが、なんかうれしかったっすねぇ。だって、絶対にサラリーマンでは味わえへんやつやから。
——確かにそうですけど・・・うれしかったんですか!?(驚)
川端: うれしかったっすねぇ。「求めてたやつや!」「ヒリヒリするぜ!」と思って。
——ほぉぉぉぉぉ! ほんま、ぶっとんでますね、川端さん!
川端: で、そこからがお金との距離の調整じゃないですか。そっから一歩ふんばれば、まぁ食べていけるというか。「あ、ここまでやりたい方にばっかり行くと駄目なんだな」ってのがわかったので、調整して、ようやく普通にはなってきましたけど。
——ああ、確かに。やりたいことしかやらなかったからこそ感じれた「ヒリヒリ」が心地よかったってことなんですね!? それは、カッコいいですね。
川端: これを味わおうと思っても、よっぽどアホやないと無理ですよ(笑)。
——両極端を知ったからこそ、このあたりかなというバランスを取りに行けたってことですよね?
川端: そうそう。お金って、「もっと、もっと」って、際限ないじゃないですか。底が見えないというか。元来、そういう闇雲に突き進んでいくのが苦手でね、ぶち当たってみて、やりたいことができるだけのお金がどのくらいかをわかった上で、前に進みたいんですよね。もし、今のやり方が無理になったり、「世の中そんなの求めてないぞ!」ってなったとしたら、潔くやめて、歩合制のところに行ってガッツリ息止めて仕事しようとは思いますけどね。生きるために。でも、自分はそれもできるってわかってるからこそ、今はこのやり方でやれる感じはあるのかもしれないですね。
事務所を訪れたお客さんの希望する物件条件を聞くよりも、まずはその人がどんな人なのかを聞くのが好きだという川端さん。「お客さんを物件に案内する車の中では、僕はよくしゃべりますよ。事務所でお話を聞かせてもらったからには、自分のことも話さなあかんと思いますからね」
右下の中の、右下のど真ん中
——川端さんは、自分では右下のどのあたりだと感じていますか?
川端: ここ(右下の中の、中央よりやや右寄り・下寄り)ですね。
いつもの「ここここボード」を持って行き忘れてしまったので、右下っぽく(?)、その場にあるもので対応させていただきました!(川端さん、PCモニター貸していただきありがとうございました)
川端: この図って、きっと、己を極めていくと、はみ出ると思うんですよね。グループ分けって、要はカテゴライズなので。僕は、仕事をさせていただいてる以上は「やっちゃいかんレベル」には行っちゃいけないと思っているんですけど、ビジネスって「自分がいて、その周りに人がいてくれて」成り立ってるじゃないですか。この図で言う隅っこに立っちゃったら、360度じゃなくて、90度しか「周り」がなくなるでしょ!?
——おー! 確かに!
川端: なので、最低限、自分の周りに人がいるような場所で、できるだけ右下かな。
——ほほ~、右下の中の、右下の、ど真ん中ですね。面白い!
川端: これって、「個人志向」と「集団志向」みたいな軸はないんですか? 競争も共生も、人がいる前提じゃないですか。個を極めていくと、どこになるんですかね?
——ん~、人がいない前提ってのがちょっと思いつかないんですが、もしかしたら、2次元じゃカバーし切れない概念になるのかもしれないですね。この4象限で、言いたいこと全部網羅してるわけでもないですし。x軸 y軸に、z軸も加えて、立体にしてみるとか?(笑)
川端: なるほど(笑)。僕は基本的に、自分がしたいことをして死にたい派なんです。「競争」して戦うつもりはそもそもないし、「共生」ってのも、極端な話そこまで意識してないんです。だから、けっこう「個人志向」だと思うんですよ。せっかく生まれてきたんだから、やりたいと思ったことを死ぬまでに自分にやらせてあげたいなっていうのしかないんですよね。
——あー。でも、アーティストとかの活動って、自分がやりたいと思ったことをやった結果として「共生的」になるってことがよくあるみたいですよね。「私は、これをやりたいんだ」っていうことがある時に、自分がそれをできる社会や環境やコミュニティを作るために、結果的に、みんながそれぞれやりたいことを尊重できる社会を作っていくことになることが多いから、気づいたら共生的な社会になってる、ってことなのかもしれないですね。
川端: なるほど~。そういうことか。そしたら、やっぱり僕も共生的ってことですね。
川端さんの事務所が入っているシェアオフィス・SOLUM(ソルム)は、東本願寺の程近くに佇む可愛らしい一戸建て。京都駅から徒歩で行けます。
取材後、シェアオフィスの玄関まで見送ってくださった川端さん。KAWABATA channelで気になる物件を見つけたら、まずは会いに行って、気軽におしゃべりしてみてください。
川端さん、ありがとうございました!
インタビュアー:徳田なちこ(取材日:2018年3月7日)