2019.07.22

Interview

編集委員に戻ってきたリレーインタビュー。今回は谷町六丁目を中心に活動する梅山晃佑さんが登場。前回(前編後編)2017年7月のインタビューでは、梅山さんの職場であるA´ワーク創造館での就労支援のお仕事について伺った。2年ぶりとなる今回は、10年を迎えた2畳大学のこれまでとこれからを伺いながら、「個性を発揮する」方法について考えた。ちなみに右下っぽさについては、前回と変化がないそうで割愛した。

世界一小さいキャンパスの誕生

——2畳大学の活動について教えてください。

梅山: 2008年6月から家を開いて「2畳大学」と称して、さまざまな活動をしてきました。きっかけは、数年前まで住んでいた家に二畳だけの部屋があって、それを有効活用できるんじゃないかと思ったんです。それまではいろんなところで場所を借りてイベントをしたりしてきたんですけど、その部屋は玄関入ってすぐ二畳だけ独立した一部屋になっていたから、そこでいろいろできるんちゃうかと思ったんです。

あと、シブヤ大学の活動を本で知ったのもきっかけになりました。シブヤ大学というのは、2006年から特定非営利活動法人シブヤ大学が運営している市民大学で、渋谷の町をキャンパスに見立てて、町にいる一線で活躍している人や面白い人を先生にして授業を聞くという取り組みです。それを知って、「めちゃめちゃ面白い、やりたい!」って思ったんです。

ただそのとき仕事をしていたから、働きながら無理なくできるようにしたいと思ったのと、同じことはできないから、「大阪らしくやる」にはどうしたらいいかを考えたんです。それで思いついたのが『探偵ナイトスクープ』で。

——え、どういうことですか!?

梅山: 『探偵!ナイトスクープ』って、視聴者から寄せられた悩みとか質問を探偵が調査して解決していくんですけど、すごいしょうもない疑問もあれば感動ものや学術的なものまでいろいろあって、調査スタイルも全力でちょっとばかばかしくやるスタンスがいいなと思って。だからこちらから「◎◎やります集まれ」ってやるより、誰かが「こんなこと興味あるねんけど」「え、おもしろそう、ちょっとやろうや」ってやる方が大阪らしいし、続けやすいなって。そういう人がやりたいことを、学科にしたり、サークルにしたりイベントにしたりして、「学校」っていう名前でやったらおもしろいなとスタートしたんです。キャンパスは二畳なので、「世界一小さいキャンパス」と言いはっています(笑)

2畳大学のキャンパス。畳2枚とちゃぶ台が基本スタイル。

2畳大学の活動——オープンキャンパスと授業

——どんな活動をしているんですか。

梅山: 活動は月一回家を開けてその日集まった人でしゃべる「オープンキャンパス」と、生徒がやりたいことを考えて実践する「授業」の2つです。

オープンキャンパスは、月一回「家を開けているから誰でもどうぞ」という会です。特にテーマは設けていません。というのも、僕は「テーマなくそこに集まった人で話したらどうなるか」に興味があったんです。7時スタートで、いつ来てもいいし、いつ帰ってもいい。予約も申し込みもいらないし、プログラムも決めてない。人数も誰が来るかもわかりません。告知文にある通り、「おもしろいかもしれないし、おもしろくないかもしれません」という不確定要素のすごく強い会なんです。

あるときは社会問題について興味ある人が集まって議論する会になったり、下ネタばかり言いあう会になったり、みんな引っ込み思案でしーんとしたまま終わったり(笑)。それも込みでなんでもありの会ですね。でもそういう会だからこそふだん出会わない人に会えることもあって、新しい発見もあるんですよ。話しているうちに、たまたまカレー好きの人が多くて、カレー学科がスタートしたり、練り物好きの人が集まっていて、練り物部っていうのがスタートしたりすることもあるんです。

2畳大学オープンキャンパスの様子。

練り物では、「練り物専門店」にみんなで行ったりしました。

——みなさんどうやって2畳大学を知るんですか。

梅山: 最初は自分が呼びたい人をいろんなジャンルから一人ずつ呼んだんです。大学の友達とかサークル友達とか仕事の現場の知り合いとか、大学のときにやっていたマスターが日替わりするバーの友達とか。そこから徐々に口コミで広がっていった感じです。あとは、アサダワタルさんの『住み開き』に取り上げられたので、それを読んで、来た人もいますね。

——今でこそ「住み開き」という言葉のおかげで、家を開いて何か集まりをするのは一般的になってきたと思いますが、当時はそれほどじゃなかったと思うんです。いきなり家を開けて知らない人が来ることに抵抗はなかったですか。

梅山: あんまり抵抗はなかったですね。僕が男性で、一人暮らしだったし、もっとこのスペースを使えたらいいのにという気持ちの方が大きかったですね。

住み開き:アサダワタルさんは自宅を使ってお店や人が集まる場を「住み開き」と名付け、本にまとめた。家賃が高いから家で、家族だけやったら面白くないから、といったさまざまな理由で自宅を開放している人たちが紹介されている。

——当日まで誰が来るかわからないということなんですが、困ったことや印象に残っていることはありますか。

梅山: 困ったことはないですね。ちょっと困るような人が来るということも今までありませんし。住所をオープンにしないとか、意図的に辿り着きにくくしているので、本当に興味ある人しか訪ねてこないんじゃないでしょうか。直前に告知するとか、住所を明かさないとかいった工夫で、ほどよい人数でほどよいテンションの人が集まるようにしています。

——授業はどんなことをするんですか。

梅山: 今までやったのは、カレー学科、写真部、練り物部、デザイン学科とか。変わったものだと、ワークショップを勉強するワークショップ学科なんていうのもやりました。最近やって面白かったのは、「留年論文」ですね。

——卒業じゃなくて留年なんですね。

梅山: 書くと卒業しちゃいますからね(笑)。卒業論文くらいしっかりやりたいけど、卒業したくはないのであえて留年という名前をつけています。これもオープンキャンパスで思いつきで始まったんです。「今ならこんなテーマで卒論を書く」とか「ちゃんとやれなくて不完全燃焼だった」とか、「今こんなテーマに興味あって書きたい」とか。そういう思いを持っている人がいるのがわかって。それぞれ自分なりに掘り下げたいテーマがあるけど、それをやる機会がない。だったら、やってみようっていうところからスタートしました。一人だとできないけど、2畳大学でやれば一緒に励ましあってできると思ったんです。

留年論文の合宿は、瀬戸内海の男鹿島にて。遊び半分、執筆半分。

——どんなものがあるんですか。

梅山: それぞれ自分の好きなテーマを選んで、一年くらいかけて合宿したり中間発表したりしました。2畳大学の10周年祭を2018年にやったんですけど、そのときに発表会をしました。テーマは、若くして病気になった方が今後どう向き合うかを探るために、「病とくらし」というテーマで同じ病気の方にインタビューしたり、不動産の仕事をしている人がこれからの不動産がどう変わるかについて考えたり、大学院に行っている人が自分の論文をブラッシュアップしたり。すごく楽しかったですね。

 ——梅山さんはどんなものを書いたんですか。

梅山: 僕は「物事の始まり方」をテーマにしました。「始め方」じゃなくて、「始まり方」というのがポイントなんです。世の中には何かを始めたいという人がたくさんいて、講座に行ったり、相談に行ったりしながらどうやったら始められるか準備をするんですけど、準備をする人に限ってなかなか始まらない。もちろん準備は大事なんですけど。逆に自分の周りで何かやっている人って、「気がついたら始まった」と言っている人が多いなと気づいて。意図的に始めたことと、始まったことにはちがいがありそうだなと思って、「始まった」と言っている人にインタビューをして、それがどういうふうに始まったか探るというものです。

例えば「まわし読み新聞」という、いろんな新聞を何人かで読んで、気になった記事を切り取って一つの新聞を作るという遊びを作った陸奥賢さんなんかに話を聞きに行ったりしました。

2畳大学には校則が5つだけあるそうです。 

意図しないところから出てくる個性に触れていたい

——留年論文は本にするとか仕事に役立てるというような目的があってやるというよりも、生活の中で感じる自分の疑問を解消したり、自分の中にある不完全燃焼しているものを解消させたいというような感じでやっているんですか。

梅山: そうですね、何かに役立てたいっていう感じではないですね。完全な自己満足ですね。2畳大学としてはそういうものを大事にしたいなと思っています。

でもただの遊びじゃなくて、僕の中ではライフワークとして常にやっていきたいものとして軸になっているものです。自分の柱にある活動のひとつです。

——みなさん何を目的に集まるんでしょうか。

梅山: まちまちですね。やりたいことを提案する人もいれば、おもしろそうなことや熱中できるものを見つけたいという人もいれば、授業のテーマに興味がある人もいますね。

——授業は梅山さんが積極的に提案するわけでもないんですよね。

梅山: そうですね、基本的にはやりたい人がやればいいスタンスで、僕はそれをお手伝いするのが役目だと思っています。やりたいことがあっても、それをどうやって形にすればいいのかわからないという人が大半だと思うんです。だから、やりたいという声が上がれば、それを授業でやるとか連続でやるとか一番適した形にアレンジをして形にするのを手伝っています。

僕は人が興味をもつことから、その人の個性がわかるのがおもしろいなって思うんです。その人の興味から、その人の人生観とか歴史とか、ホンネが見えたりして、それに触れられるのが面白いんです。

——その人の興味に、人となりが現れているから興味があるんですね。

梅山: そうかもしれません。僕はあまり「自分らしさ」って言葉が好きじゃないんです。何かやったりアドバイスしたりしたときに「梅山さんらしいね」って言われるでしょ。でも、「ほんまに自分らしいんかな」ってふと疑問に浮かんだことがあったんです。言葉の選び方とかアドバイスって、尊敬している人や過去の誰かから影響を受けていることなんですよ。そう考えると、ほんまにオリジナルなんかないやんって思ったんです。でも、いろんな考えかたがあわさったところから出てくる自分らしさみたいなものは好きなんです。

音楽でもアート作品でも、そういうどろっとしたところから感じられるような個性が好きなんです。僕はそういう、人の意図しないところから漏れ出てくるぐちゃっとした個性みたいなものに常に触れていたいです。2畳大学でみんなのやりたいことや困りごとを聞いていると、そういう意図しない個性をすごく感じるんです。だから楽しいのかもしれません。

——だから2畳大学では何かをマスターするとか、役立てるっていうことよりも、自己満足を大事にしているんですね。

梅山: そうですね。今って、そういうわかりにくい個性を出しづらい世の中になっているなと感じるんです。自分の思っていることを無理矢理社会的な言葉にあてはめたり、肩書きとか名前とか枠とかあるものに無理矢理当てはめたりしてるんじゃないかって。本当は言葉で表現しにくいぐちゃぐちゃなことを、そうやって世の中にある言葉で無理矢理丸くしちゃうのが面白くないなって。

 これからは個性を暴発させる時代

——これまで2畳大学の活動を10年続けてきて感想はありますか。

梅山: 10年前に始めた頃は、もっと気軽にやりたいことができたらいいなくらいでした。例えばギターを弾けるようになりたかったら、教室に行くくらいしか選択肢がなかった。でもそれはお金がかかるし、時間も場所もないし、なかなかできない。そうすると気持ちが萎えてしまう。それがすごくもったいないと思っていた。

でも興味のある人が2、3人集まって練習しあうとか教えあうとか、簡単なところからできることがたくさんある。教室行くか行かないかという1か0かじゃなくて、もっと気楽な0.1とか0.2でできることを増やしたいなと思って2畳大学を始めました。

でもここ10年で0を0.1とか0.2にする人が増えてきた印象があります。Facebookとかのイベントページを使ってよくわからないイベントを立ち上げる人が増えた感じがするんです。あれがいいなあと思います。

——SNSのおかげで気軽にできるようになりましたよね。

梅山: 人とつながりやすくなったし、場所も見つけやすくなりましたね。ただ、、ツールが多様に増えた分、枠にはまりやすくなった部分もあるんじゃないかと。なのでこれからは、その枠からうまく逃れるために、個性を暴発させるみたいなことも大事になってくるんじゃないかと思っているんです。

 ——個性を暴発って例えばどんなことですか。

梅山: さっきのような「言葉で表現しにくいぐちゃぐちゃなこと」をどんどん表現しちゃという感じですかね。世の中にある言葉で無理矢理丸くしちゃうんじゃなくて、本質に近い形のまま自分の言葉で言ってみる、みたいな。そういうのをもっともっとやれたらいいなあ。それで、今年から2畳大学で力を入れたいのが、「学びのアホ図鑑」というプロジェクトなんです。

 ——学びのアホ??

梅山: アホは大阪の人には褒め言葉ですよ。尊敬の念を込めてアホって言いますから(笑)。

具体的に言うと、学ぶときってある程度こうしましょうっていうルートがあるでしょう。例えば、英語勉強するのに、文法とか単語覚えてそれを一通りやったら会話みたいな。この基本のルートがあまり合わない人がいるんですよ。そういう人たちの中には型通りにできないけど、独自に自分にいちばん合った学び方を見つけるのが上手い人が結構いるんです。はたから見たらそれはどう見ても遠回りなんですけど、その人からしたら最短距離なんですよ。

——どんな人がいるんですか。

梅山: 例えば、資格の勉強をするときに、「自習フェス」と友達と名前を付けて、ロゴとTシャツを作って、そのTシャツを来て勉強するとか(笑)

 ——やばいですね(笑)

梅山: その時間あったら勉強すれば良いのにって思うかもしれませんが、彼女にとってはそれをした方がモチベーションが上がるんです。このことで勉強が楽しくなるんです。それってとても大事なことだと思うんです。誰も考えつかないけど、自分はこうしたらモチベーションが上がるってぱっと選べるっていうのは、天才やなって。僕はそういう人を総称して「学びのアホ」と呼んでるんです。

——学ぶことに対してアホになれるっていう意味で、学びのアホなんですね。

梅山: はい。ゆくゆくは他の人がなんと言おうと、自分が一番楽しいやり方を知っている人をいっぱい紹介して、「学びのアホ図鑑」っていうのを作りたいんです。「こんなアホがいっぱいおるぞ」と紹介することで、「自分ならどうする?」と考えることができたり、いつもやっているやり方でうまくいかなかった人が、もっと違うやり方もあると思えたり、新しく自分を発見するきっかけになったら面白いなと思うんです。

 ——ちなみに梅山さんも学びのアホだったりするんですか。

梅山: 僕は講座に行くんじゃなくて、実践してみるのがやりやすいので、「プロジェクトにして、実践」します。2畳大学とか、ナローワークとか、プロジェクトにすることで僕の学びたいことが学べる。2畳大学はシブヤ大学っぽいことの実践、ナローワークは仕事づくりの実践という感じです。

 ——「学びのアホ」を集めて、どうするんですか。

梅山: 「学びのアホ」って『ジョジョの奇妙な冒険』にでてくる「スタンド」みたいなイメージなんです。スタンドは「その人の個性が発現したもの」と説明されていて、その人の個性が「必殺技が使えるキャラ」みたいになって登場するんです。「学びのアホの能力」をそんなふうに紹介していったら伝わりやすいかなと思っています。『ジョジョの奇妙な冒険』に似た絵が得意な人がいて、少しずつキャラを作って描いてもらっているんです。ゆくゆくは漫画できたらなって思います。

学びのアホ図鑑は、イラストがすごいクオリティ。

——これからの時代にどうして「学びのアホ」が必要なんでしょうか。

梅山: 今の世の中って、ルールの時代になってきた感じがするんですよ。何かを非難するときにも、自分の言葉で非難するんじゃなくて、「こうだからダメ」ってルールがあるときに安心を求めるような傾向が大きくなってきたなと感じるんです。その方向が大きくなっていくと、自分の言葉が失われるような不安があるんです。これからの時代はルールを変えるとかルールを破るっていう方向よりも、ルールに合っているか合っていないかということの方が気になる時代になるんじゃないかという予感がします。そのときにルールをいかに守るかは避けようがなくても、コンプライアンス的なものを守りつつ、自分の個性を失わずに表現しつづけることができたら、人にいろんな道があると示せるんじゃないかと思うんです。

 ——たしかに、道は一つじゃない方が生きやすそうですもんね。

2018年10月に実施された10周年祭(留年式)の様子

梅山さん、ありがとうございました。

 

インタビュアー:太田明日香(取材日:2019年4月22日)

Tag
#武田緑(前編)
#武田緑(後編)
#上田假奈代(前編)
#上田假奈代(後編)
#秋田光軌(前編)
#秋田光軌(後編)
#汐月陽子(前編)
#汐月陽子(後編)
#武田緑(前編)
#武田緑(後編)
#梅山晃佑(前編)
#梅山晃佑(後編)
#椎名保友(前編)
#椎名保友(後編)
#ナカガワエリ(前編)
#ナカガワエリ(後編)
#オカモトマサヒロ(前編)
#オカモトマサヒロ(後編)
#うえしばえいじ(前編)
#うえしばえいじ(後編)
#梅山晃佑
#森川真嗣(前編)
#森川真嗣(後編)
#釜中悠至(前編)
#釜中悠至(後編)
#笹尾和宏(前編)
#笹尾和宏(後編)
#市川ヨウヘイ(前編)
#市川ヨウヘイ(後編)
#平田、仲村、乾(前編)
#平田、仲村、乾(後編)
#藤原光博
#藤田ツキト(前編)
#藤田ツキト(後編)
#美浦タカシ(前編)
#美浦タカシ(後編)
#川端 寛之(前編)
#川端 寛之(後編)
#さがひろか(前編)
#さがひろか(後編)
#小竹めぐみ(前編)
#小竹めぐみ(後編)
#藤田ツキト(前編)
Interview
右下っぽい人たちの
リレーインタビュー
Torikumi
右下っぽい人たちの
取り組み図鑑
Zadankai
右下っぽい人たちの
ここどこ探究座談会
Column
右下っぽい人たちの
気ままコラム
Tag