2017.09.24

Interview

ここここ|武田緑さんインタビュー(前編)

JR東淀川駅前に、小さな、かわいらしいコミュニティスペースがある。一般社団法人コアプラスの事務所でもあるこのスペースには、「教育の未来を考える人たち」が集まってくる。「教育・教育観を再構築し続けるためのコミュニティでありたい」との願いを込め、「COmmunity of Reconstructing Education」の頭文字から団体名をつけたというコアプラス代表の武田緑さんは、生まれ育ったこの土地を拠点として、多様な人々がよりよい教育を目指して対話・協働するための《場づくり》を行っている。 拠点での講座やイベント以外にも、国内フィールドスタディや海外教育視察ツアーに精力的に動き回り、世界一周の船上でグローバルな教員を育てるプログラムまで実施している。「右下的な」イベントのファシリテーターやコーディネーターとしても、引く手あまただ。どんな思いを持って活動しているのか、そのルーツと教育観について伺った。

 

教育者支援と地域活動

 

——普段されている活動を教えてください。

武田: いろいろやっていますが、メインは「コアプラス」という、教育のNPOの代表をしています。

 

——教育・・・といっても、いろんな仕事があると思いますが、どのようなNPOなんですか?

武田: 子どもたちに何か直接支援をするような活動というわけではなくて、学校の先生を中心に、教育関係者に向け た研修・イベント・スタディーツアーなどを行っています。教育者の「学びの機会づくり」、教育者同士の「つながりの場づくり」という感じですね。

研修・イベント・スタディーツアーといったコンテンツの提供だけでなく、教育資源のコーディネートやマッチングなどもしています。「学校でこんな授業をやりたいんですけど、ゲストでいい人いないでしょうか?」といった声に対応したり、公立の学校・フリースクール・NPO・・・といった、さまざまな立場の関係者をつなげる役割をしたり。教育と言ってもいろんな切り口と立場があるので、子どもたちのことを考えて、コーディネートやマッチングをするのは、大事やなぁと思っています。

 


コアプラスの運営するコミュニティスペース「co-arc(コアーク)」では、教育者同士のつながりの場となる「Educators Cafe」など各種イベントが定期的に開催されている。

 

あと、今年の11月に「エデュコレ~多様な教育の博覧会~ 2017」という教育関係者のための大規模イベント を東京と大阪の2ヶ所で開催する予定です。これは5回目の開催で、一日を通してさまざまな教育のカタチに 出会うことができます。今回の出展団体数は両会場トータルで80以上、トークセッションやミニワークショップの 特別企画も充実してますので、興味のある方は、ぜひ。

 


これまでに開催された「エデュコレ~多様な教育の博覧会~」の様子。

 

——普段はどのあたりで活動されてるんですか?

武田: 事務所は、東淀川区と高槻市にひとつずつあって、それぞれ、事務所兼コミュニティスペース・コミュニティハウ スという感じで、貸しスペースや合宿所などとしても運営しています。活動の場をローカルに限定してるというわけではなくて、東京で研修をやったりもしますけど、基本的にはコミュニティには関西の人たちが集っています。


一般社団法人コアプラスのホームページ

 

——それが、ベースの活動なんですね。他には、どんなことをやってらっしゃるんですか?

武田: そうですね、地元・東淀川の地域活動にずっと関わっています。例えば、母校でもある小学校の校区では、地域の教育コミュニティづくりを通して子どもの支援をする「はぐくみネット」のコーディネーターになりました。他には、地域活動協議会の総務部会というのにも一応所属していて、「地活協ニュース」の編集をしたり、地域のイベントのお手伝いをしたり・・・。あとは、地域の子どもたちのサードプレイス「放課後スペースviva!宿題カフェ」の運営委員などもやっています。

 


地域の子どもたちのサードプレイス「放課後スペースviva!宿題カフェ」では、子どもたちに宿題を教えたり、一緒に遊ぶボランティア先生が活躍中。

 

自分を育ててくれた地域への思い入れ

 

——若い方、しかも独身の方で、地元の地域活動に関わろうとしてる人って、けっこう珍しいと思うんですが。

武田: 私、実家はもうだいぶ前に出たんですけど、あえて自分の地元の小学校区に家を探して、今も住んでるんですよ。

 

——ほー! なぜですか!?

武田: なんというか・・・地元にこだわりがあるんでしょうね。地域の大人たちにいっぱい関わってもらって、子ども時代 にいろんな経験をさせてもらってきたので、地元にすごく愛着があるというか。まぁ、時々「愛憎」になることもあるんですけど(笑)。

 

——そのくらい、思い入れがあるってことですよね。

武田: そうですね。特に、私が生まれて育ったところは、人権教育とか同和教育が盛んなところで、いろんな差別の問題などに熱心に取り組む地域・学校だったんです。コミュニティ内の人たちのつながりが強くて、その中で、ぬくぬくと豊かに育ててもらったなぁ、と思います。

でも、地域というのは、ある意味狭い世界というか、同質なコミュニティなんですよね。大人になっていく中で、広い世界を見たり、多様な価値観を持つ人々と出会ったりして、今の地域の課題に気づくようになり、地域への愛着がゆえにそれをコミュニティの中で一所懸命変えようとしたらなんだか浮いてしまって・・・という経験があったんです。で、アイデンティティが地元にあるのに、その中で自分を表現しようとするとめっちゃ居心地悪い!みたいな時期が学生時代にありまして・・・ (笑)。

 

——まー、言うだけやったら、言えちゃいますしね。若ければ、なおさら。

武田: そう。今なら、生意気だったのも、地元で汗流してきた人たちへのリスペクトが足りなかったというのも、よくわかるんですけど。
「風の人」と「土の人」の話って、知ってますか? 世の中には、いろんなところを飛び回りながら、新しい情報やつながりを広げていく、いわゆる「風の人」と、ひとつの場所に根を張って、自分のテーマや受け継がれてきた大事なものをこつこつ耕していく「土の人」がいる、みたいな話があって・・・。

 

——その両方がいて「風土」ができる、ってやつですね。聞いたことあります。

武田: それです。私は多動傾向があって、いろんなことに興味が向くし、多分、本質的にはめっちゃ「風」タイプなんですけど、育ちはめっちゃ「土」なんですよ(笑)。「土」に否定されると存在意義を見失ってしまう「風」、というか・・・(笑)。

 

——なるほどー! 面白いです!

武田: だから、いっそどこかに飛んでいけたら楽なんですけど、どうも離れきることができないので、いい意味で諦めて、何か地域に貢献できるようなことはしていきたいと思っているんです。自分が提案をすることで徐々に変えていけることを増やしていきたいな、とは思っています。 「はぐくみネット」の取り組みなんかは、コアプラスの文脈ともつながるので勉強にもなるし、何かかたちにできたら実績にもなりますよね。そういうメリットもあると思います。


その言葉の熱量と豊かな表情から、武田さんが育った地域のつながりの強さや関係の濃さが伝わってきた。

 

コアプラスの理事たちからは「どうあがいても『風の人』」「おもしろ迷惑」などの人物評をもらっているという武田さん。教育者を支援するNPOを始めるきっかけは、一体何だったのでしょうか? そして、右下っぽい教育とは!?

後半へつづく

インタビュアー:徳田なちこ(取材日:2017年7月17日)

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