2018.10.26

Interview

ここここ|さがひろかさんインタビュー(後編)

造園のお仕事と「大地の再生講座」を通じて、各地の「窒息」しそうな大地をゆるめる活動をおこなっている さがひろかさん。

前編では、「大地の再生」の考える現代土木の問題点や、庭づくりに興味を持ったきっかけなどを伺いました。後編では、さがさんが大切にしている感覚や、右下度合いについてお聞きします。

五感で感じる本質的な気持ちよさを目指したい

——さがさんが仕事や活動をする中で、大切にしていることや目指しているものなどがあれば、教えてください。

さが: たぶん、建築をやっていたときから「場所」をつくることやデザインすることに興味があったと思うんです。……と、思うんですが、“カッコいい空間”とか“おしゃれな空間”と言ってもいろんな基準があって、私はそのときに流行っていた空間のカッコよさがわからなくて、あまりそこに行きたいと思わなかったんですね。

——ほー。

さが: で、お庭づくりを始めて、造園の世界にも流行りみたいなのはあるとわかってきたんですけど、その一方で、「大地の再生」で矢野さんがやっているようなお庭づくりというのは、土の中の環境を整えることが中心なので、ともすると地面の上はほとんど触らないようなこともあるわけなんです。そういう活動に関わらせてもらって、3年くらい現場に参加した感想として、何というか本当に……草刈りをしただけでも、とにかく気持ちいいっていう体験がね、あるんですよ。

完成のときに、素敵で写真映えするようなお庭っていうのも目指したいですけれど、それ以上に、五感で感じる気持ちよさとか、「いい場所になったね!」っていう感覚とか、人間で言えば、見た目を着飾ったというよりも「内側から綺麗になろう!」みたいなことですよね。そういう感じのところで、今ようやく自分のやりたい空間づくりが見えて来たかもしれないです。本質的に気持ちがいいというか、感覚的に気持ちいいというか。

——それは「エネルギー」みたいなものですか?

さが: ……「気」かな。「気のめぐり」ですね。うん、「エネルギー」って言葉にも置き換えられると思います。土の中の、空気と、水。そして、地上も含めて、風通しとか、光通しとか。それが循環しているような場所づくりというのを、やっていきたいと思っています。それが、美しいと感じる。そういう美しさを目指していきたいですね。

「美しい、楽しい、そういう場所をつくることを、やっていきたいです」。

——素敵です。そういった活動やお仕事を、これからもずっと続けていきたいと、今のところは思っている感じですか?

さが: それは、わからないですね! たぶん、途中でまた違うことを思いつくかもしれないですし(笑)。でも、今のところは、楽しい。まだ全然、始まったばかりかな。勉強中ですね。「大地の再生」もそうだし、また旅行に行ったりすることも含めて、いろんな場所を見たり、いろんな人に出会って、視野を広げたいです。

本町エスコーラとの出合い

——さがさんの事務所が入っている「本町(ほんまち)エスコーラ」についても少し教えてください。

さが: はい。本町エスコーラは、路地の奥にある空き家を改修して、コミュニティスペースやアトリエ・事務所などに使っている場所で、名前の由来はポルトガル語で「学校」とか「公民館」みたいなニュアンスの言葉だそうです。広場や共有スペースは、作業やイベントのレンタルスペースとしても使えるようになってます。

本町エスコーラ
http://www.escola-kyoto.com/escola-index.html

三十三間堂に程近い住宅地。「ここでいいのかな?」と少し不安になる路地を通って奥に進むと……

意外な広さの広場と長屋が現れ、びっくり! ここが本町エスコーラ。

長屋の一室。さがさんの事務所の入口。

——さがさんとエスコーラの出合いは?

さが: 大学院を卒業してから旅行に行くまでに一緒に内装の仕事やっていた友達が、このエスコーラ全体の改修をやることになったんですね。「ランチ!設計舎」の和田寛司くんという人で、学生のときからの友達なんですけど。彼がここの空き家活用プロジェクトに関わることになり、「部屋を借りるんだけど、事務所使いしたいからよかったら一緒にどう?」と、声をかけてもらったのがきっかけです。京都に拠点がほしかったし、ちょうどよかったので、「やったー!」みたいな感じでした(笑)。

——なるほど。ここは今、全部で何人くらい入ってるんですか?

さが: 今は、たぶん12~13人くらいいると思います。住んでいる人もいますよ。

——へ〜! イベントなどは、どのぐらいやってるんですか?

さが: 今のところ定期的にやってるのは、春と秋に「エスコーラ市」といって、フリーマーケットみたいなイベントをやっているのと、周年記念のイベントですね。それ以外でも、何か「やりたい」と言ってもらえたら使えますし、住人の中から「来月こんなイベント企画したいよ!」とか提案したりして、単発のイベントをやってみたりもしています。

——このまえ(2018年7月)は、エスコーラの広場のメンテナンスワークショップをやってましたね。(編集部注:ライターの徳田が参加者として参加させていただきました)

さが: はい。広場の地面はもともとカッチカチに固くて草も生えなかったんですが、2017年3月に「大地の再生」のワークショップを企画して、関西支部のメンバーに来てもらい、水脈整備をしたんです。その後のメンテナンスを私がしていたので、経過報告と、メンテナンスの学びを深めようということで、続編ワークショップを行ないました。

before: 2017年3月。整備を始める前のエスコーラの広場。かつては工場が建っていたという広場の地面はカチコチに固まり、草木が豊かに育つ環境ではなかった。

after: 取材に伺った2018年9月(ほぼ同じ角度からの撮影)。「大地の再生」の手法による水脈整備と日々のメンテナンスを経て、ゆるやかに緑が増えてきた。

「村社会」のいいところ

——さて、右下についてもお聞きしたいんですが、ご自分では右下の中でどのあたりだと思いますか? 右下じゃなくてもいいんですが。

さが: これ聞かれるんだろうなと思ってました(笑)。考えてたんですけど、たぶん…このへんかなぁ…と思って。

右下の中の、左下あたりを指さすさがさん。

——おっ。割と下の方いきましたね。

さが: あ、そうですねー。このへん…かなぁ、わかんないですけど。

——その心は?

さが: 右が改革で、左が現状維持ですよね。「『右下っぽさ』ってなんなん?」(編集部注:「右下」についての説明ページ)を読んでたら、現状維持ってのは「ムラ社会」的なとかそういう感じで書いてあったんかな。それで、私はどっちかというと改革思考だと思うんですけど、昔からの村のつながりってのもいいなぁと思っていて。「大地の再生講座」でも、みんなで土木作業をするんですけど、そういう作業のことを私たちは「結(ゆい)作業」と呼んでいるんです。「結」って…結ぶってことですね。みんなで持ち回りで、村の中の誰かのお家に行って、「今日は○○さんちの屋根を直そう」みたいな、お互い様の助け合いというか。沖縄だと「ゆいまーる」って言ったりするみたいなんですけど。

——はい、聞いたことあります。

さが: それは、ムラ社会と言ったら、ムラ社会かもしれないんですけど、昔からあったものですよね。でも、今はなくなってきてるから、現状維持とは違うかもしれないんですけど、昔からあった日本人らしいおせっかいさというか、協力する気持ちみたいなのも、すごくいいなぁと思っているんですよね。何か完全に新しい改革ってよりも、今までにあった良さを活かして、新しい意味での昔っぽさみたいな。そう思ったので、あまり右側に行き過ぎてるわけではないのかも、と思いました。

——なるほど。そう言われると納得です。「『右下っぽさ』ってなんなん?」のページで「ムラ社会」と書いていたのは、「ムラ(村)」がダメだという話ではなくて、外から何も取り入れない、その集団だけでの閉鎖的現状維持がよくないんじゃない? みたいなことなんです。

さが: なるほど。

——だからもし、村がどんどんなくなっていく社会になっていくと、今度は村をやろうとする人が、最先端になっていくんですよ(笑)。「え、今から村つくるの!?」って話になるから、実は右端なんですよ。

さが: あはは! そうなんですね。超おもしろい! じゃあ、私、はみ出てたのかな(笑)。

——ここここ界隈でよく話してるのは、横軸には時間が流れてるって考え方なんですよね。今の時代に右側にある新しい考え方が、時代が進むにつれて、どんどん左に移動していくというか。どんな時代も、最初は新しくて斬新だったものだったのが、世の中に受け入れられて、だんだんと当たり前や陳腐になっていくと、今度はそれが保守的なものになっていく、みたいな。たとえば30年後の右側には、今の私たちには全く考えもつかないような新しいものが出きているはずなんです。そういう自動的な流れはあるよねって話は、インタビューでもよく出ます。

さが: なるほど〜。

——だから、常に右にいたいってなると、常に新しいことをしていないといけないんですよね。

さが: 「走り続ける人!」みたいな感じですね。でも、じゃあやっぱり私はここらへんでいいかもしれない。そんなに先頭を走っていくタイプじゃないんで。

チームワークっていいな

——ちなみに、上下の軸でそのあたりなのは、どういう考えですか?

さが: 競争志向みたいなのは、全然ないと思います。別に思想的にっていうんじゃなくて、性格的にないと思いますね。共生志向に関しては、私、昔からチームワークみたいなのって苦手だったんですけど、最近は「なんかチームワークっていいな」って気持ちになってきてるんです。

——最近って、いつくらいからですか?

さが: 「大地の再生」をやるようになってきてからですかね。今の「大地の再生」の関西支部チームは、みんなけっこう「一人親方」だったり、造園業に限らず農業系の人もいたり、いろんな人がいるんですけど、みんな自立してて、それぞれ個性があって、得意なことがある人同士が自分の得意を持ち寄れるようなチームなんです。それって、本当にすごくいいんですよ! もちろん人間だから、短所もそれぞれあって、私みたいな奴も紛れてるんですけど(笑)。ちゃんとしてる人だけでもなく、でも私みたい奴ばっかりでもなく、偏ってなくて、それぞれ自分の持ち味で、頼るとこは頼って、任すとこ任して、みたいな感じなんですね。

さが: お金を稼ぐことを目指し始めたら、誰がリーダーシップを取って、誰が一番お金をもらうか、とかになって、適当な役割分担ができなくなってくると思うんですけど、お金を稼ぐ組織とか会社とはまた違う「なんとなくのチーム」なんですよね。

——なるほど。

さが: そのチーム自体で食べていかなきゃという意識がないゆるさが助けになっている部分はあるとは思いますけど、そういうチームワークって、お互いを活かし合って、お互いに活かされ合って「共に生きる」という感じだから、すごくいいなぁと思ってます。

——はい、そうですよね。

さが: 競争で、誰かにお金集まるとか、力集まるとか、負担集まるとかより、お互いに、みんなほどほどに、みたいなのが、心地いいかなーと、今は感じてるかな。希望も含めて。でも、もしかしたら、ほっといたら上に巻き込まれがちな動きってのもあるのかなっていう……。

——そうそう、それもよく話してます。ここここ編集部では「エスカレーター理論」って言ってるんですけど(笑)。さっきの、左右の時間軸が「じっとしてたら、新しいものは勝手に左に流れて行ってしまう」みたいに、縦軸も「ぼーっとしてたら、上の競争に巻き込まれていってしまう」んですよ。

さが: そうですよね。

——右下にいたかったら、とどまり続けないといけないというか、ある意味、右や下にひっぱろうとしないといけないんですよね。この話は、もうほんと毎回のように、出ますねー。

さが: あ、出ますか。そうなんですね。じゃあ、右下の中の人たちはけっこう大変ですね。

——そうなんです。

さが: パワーが要りますね。

——そうですね。でも、やっぱり、そのパワーとかエネルギーを感じるからこそ、こういう風に、会いに行きたいっていう気持ちになるんですよね。

さが: あー、そうか。そうかもしれないですね!

緑の背景がよく似合う自然体な笑顔の さがさん。小さなネムノキに向ける眼差しがとても優しい。

さがさん、ありがとうございました!

インタビュアー:徳田なちこ, 藤田ツキト(取材日:2018年9月3日)

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