2018.12.14

Interview

昨年9月にウェブマガジン「ここここ」が誕生して早1年。リレーインタビューでは13組もの「右下っぽい人」に出会うことができた。ここで一度、リレーの起点となった運営メンバー4人にバトンを戻し、1年間で変化した思いや活動、「右下っぽさ」ついて改めて聞いてみたい。まずは、「ここここ」編集長でもある武田緑さんに伺った。

前回のインタビューはこちらから(前編後編

右下っぽい組織の変革

——武田さんは、まず大きな変化として所属団体が変わったんですね。

武田: そうなんです。代表をしていた教育NPOコアプラスを解散して、今は武田緑の個人事務所Demoとして活動しています。ただ、私のやってることは引き続き教育関係者へのアプローチで、そんなに変わってないんですけどね。海外のスタディツアーをやったり、エデュコレっていう教育の博覧会も来年はやろうかなと思ってます。1つだった団体を、「はらいふ」というフリースクールとこちらと2つに分けたような形でしょうか。
(Demoホームページ http://dem0.work/

——なるほど。10年も続いた組織の解散、思い切りましたね。運営の方法とか、変わった部分はあるんでしょうか。

武田: うーん、スタッフは引き続きの人もいますが、扱いが変わりました。コアプラスのときは一応私が代表だけど、みんなの団体っていう感じなので、全員が主体的に動くことが前提。「時給が出てる時間だけ働く」とかじゃなくて、「今限りあるリソース(予算)の中から自分たちの報酬も捻出して、それでそれぞれが”できるだけ“働く」みたいな感じ。

でも今は「私の」団体なので、スタッフも時給制だったり、業務報酬だったり、ある意味スッキリしています。

——それで、スタッフさんや武田さんの動き方はどう変わったんでしょうか。

武田: 以前は、みんなのやりたいことや問題意識とか思いとかを集めて、みんなで何するか決めてたんです。でもそれって、全員の意見がぴったり合うことってなかなかなくて。こうしたい、ああしたいって話し合ってるうちに、なんかどっちもテンション上がらない事業になったりするんです。それに、内部の合意形成にめっちゃ時間がかかってしまう。

——どっちの意見も聞いてると中途半端になってしまうことはありそうです。

武田: この前友達が「私の船は一人乗り」っていう話をしてたんです。いろんな人が1つの船に乗って一緒に進んでいく状況ってややこしくて、「私は私の進めたいように船を進めたい!」みたいな状況になってきて。「みんなの船をつくることが目標」って人も中にはいると思うけど、私はやりたいことがはっきりあるタイプなので。そういう意味では、今のスタッフは、私がやることに何らかのメリットを感じて、私の船の操縦を手伝ってくれてる人たち。それは単純に時給がもらえるからでもいいし、思いに共感するからでもいいし、何か私のやった活動の先が見たい、とかでもいい。だから、相談はするけど、決めるのは私。今は、そう自分も周りも思ってるから、活動するのが楽になりました。

友人の櫨畑 敦子さんが絵本のように表現した「わたしのふねはひとりのり」
https://note.mu/party_shussan/n/nade3924158cd

——船頭多くして船山に登ると言いますからね。組織から個人+サポーターというかたちに変化して、いい方向に舵が切れたようですね。

武田: あとね、これは表現が難しいんですけど。みんながそれぞれ自分で決めるピラミッド型じゃない組織とか、報連相しなくていいとか、そういう上意下達じゃない自律的な組織がもてはやされてますよね。ティール組織の本とか売れてるし。右下っぽい界隈とかソーシャル系の現場で流行ってると思うんですけど。それってたしかに聞こえはよくて、とてもいい感じがするんですけど・・・実現できたら素晴らしいんだけど・・・うーん、なんていうかそれって、「能力高い人たちの集まり」でしかできひんな、と。

——ハーーー、なるほど。

武田: 能力も自律心も高くて、精神的に安定してる人の集まりでしかできなくない?ってどこか冷めた気持ちで眺めている自分がいて。でも、結構多くのNPOがそうだと思うんだけど、やっぱりどこか生きづらい人たちが集まってきたり、そういう人を受け入れながら運営してるところがあるんじゃないかと思うんですよ。だからああいう新しい組織論を実際にかたちにするのは難しいっていうのもある。

みんなが主体的に動けて、民主的なプロセスで組織が動いて、しんどくない楽しい職場。確かにそれは私にとっても理想です。でもこれがめっちゃ難しい。

で、そうなると、解決策としては組織を大きくしなければいい(小さくなら実現できる)とか、ゆっくり進めばいいっていう結論になりがちだと思うんです。

——1人乗りの船じゃないにせよ、少ない人数なら意見もまとまりやすいですもんね。

武田: そうなると、一方で事業拡大というか、大きなソーシャルインパクトを与える活動ができなくなる。小さな組織でできる方法もあるのかもしれないけど、少なくとも私には難しくて。それで、小さい範囲でできることだけやるっていうのは、私にとっては「そんなん、全然社会変えてないやん!」と歯がゆくなっちゃうんです。同質な人たちで閉じたコミューンみたいなものがつくりたいわけじゃない、と。それってここここの「右下の図」でいうと、すごい下のキワの方(共生方向)に寄ってる感じがする。もちろんそれを否定はできないし、今はネットがあるからコミューン同士がつながるような動きもとりやすくて、それはそれで面白いような気もするんだけど。一方で、今の社会の「主流」というか、多くの人が暮らしてる世界は離れてると思う。だから社会のしくみにそんなに影響しないというか。

——そのあたりの葛藤は、昨年9月に「右下っぽい組織(?)の悩み」http://kokokoko.net/416/ の中でも語られてましたね。

社会を変えるとはどういうことか

——武田さんにとって、社会を変えるっていうのはどういうプロセスを考えてるんでしょうか。

武田: これは難しくて、いろんな意見があると思うんですけど、現状を改革しようと思うときには、現状のルールやカルチャーに則って変える必要があると思うんです。これって、なんか全然右下っぽくない話やけど・・・。

——もう少し詳しく教えてください。

武田: 今の日本社会って、例えば何か意見を言うにしても、何を言ったかよりも誰が言ったかとか、その人がどのくらいのポジションの人かとかが重視されてる。みんなで一生懸命話し合ってたことが、誰かの鶴の一声でひっくり返ってしまったり。だから、しょうもないことに思えるかもしれないけど根回しはしたほうがいいし、意思決定権のある人からは嫌われんほうがいい。別に媚びへつらう必要はないかもしれないけど、主張して正当性が高ければそれが通るという社会でもないわけで。「実」をとるためには、清濁合わせ飲むとか、パワーを持つために立ち回るというような、その辺のバランス感覚がいるんじゃないかと思ってます。

——前回のインタビューで、自分は右下にいるけど、他のポジションの人とかとも話がしたいって言ってた話につながるんですかね。

武田: どうやろう、つまり戦略的に動く必要があるっていうことなんですけど。あと「社会を変える」って、実はイメージが人によって違うと思うんですよ。今の社会という「枠」みたいなものがあるとして、1つはこの枠の中を変える、今の社会が前提としているルールとか枠組みをベースにその中身を変えるというもの。もう1つは、この枠の外に違うルール圏をつくってそっちに抜け出てこれるようにするような感じ。コミューンと表現したのは、後者のイメージです。

——うーん、抽象的な話ですね。

同じ砂山を掘っていた

武田: 教育で例えましょうか。現在主流の枠は「公教育」。制度で認められている学校、のことですね。で、ここが今どんどん地盤沈下していってます。この枠の中はもともといろいろ問題があって、画一的でしんどかったり、この枠に合わない人を苦しめてきたところがあります。この中がしんどくていられない人がすでにたくさんいて、不登校はその表れでもあるわけです。

で、これを解決するために、1つはこの外に出ましょう、違うルールの場をつくりましょうという視点があって、これがフリースクールやオルタナティブスクールなんかの動きです。でももう一方で、この今ある枠(公教育)を変えて、しんどくない場所にしようという視点もあります。私はこの10年ほどやってきた教育運動は、前者の動きや、存在を若い先生や教員志望の学生さんたちが知ることで後者を実現しようというものでした。どちらかというと、公教育を変えたいんですね。

——なるほど。外に出た人だけじゃなく、中にいる人もみんなが居心地のいい社会のほうがいいですもん。

武田: もちろん、「外側」をつくる活動も大事なんですよ、めっちゃ大事。だって少なくとも今この瞬間、しんどいっていう人がいるんだから。でも、世の中のほとんどの人はこの枠(公教育)の中にいるんです。その外側に行ける人っていうのは、情報なりつながりなりお金なり、それなりのリソースがある人です。多くの人は外側があるって思えないし、知ったとしても行き方がわからなかったり、気力がなかったり。で、この2つの活動は、実は目指してるところはそんなに違わないはずなんですよ。なんていうか「同じ砂山を反対側から掘ってる」って表現した人もいるんですけど。

——両方の現場や人を見ていないと気づかない発想かもしれませんね。

武田: 両者になんとなく断絶があるんですよ。でも、子供の主体性を大切にしたいとか、民主的な社会をつくりたいとか、同じ砂山を掘ってる人たちはきっといて「こっちここまで掘り進みましたよー、そっちどうですかー」「こっちけっこう掘れましたー」って両側から声かけ合うみたいなことができるはずです。だから、その砂山は何なのかっていうのを明らかにしたい、この砂山に何か言葉をつけたいですね。そういう流れで、中の(公教育の)人と、外の(フリースクール等の)人が話す機会をつくったりしています。

後編へつづく

(ライター:宮崎絵里子 取材日:2018年11月23日

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