2017.10.27

Interview

藤田ツキトさんがバトンを渡したのは、美浦タカシ(みうらたかし)さん。月間30万PVをたたき出す大阪市城東区のローカルメディア「城東じゃーなる」の編集長だ。
城東じゃーなるは、「〇〇小学校の近くに新しいカフェができるみたい!」「〇〇商店街のうどん屋が閉店してたみたい。」といった地元のお店の開店・閉店情報や、ニュース・イベント情報、区内の魅力的な人々を独断と偏見で認定する「人間区宝さん」の紹介など、地元感たっぷりの情報を、軽快な文体でゆるく発信し、区民の重要な情報源となっている。活動を始めたきっかけや続けるモチベーション、そして美浦さん自身の右下っぽさについて伺った。

 

右上と右下の間で

 

——美浦さんとツキトさんと出会いはどんな感じだったんですか?

美浦: 確か、ゲストハウスの周年パーティーでしたね

ツキト: そうだ。4年くらい前ですね。タカシくんが、なぜか知らんけど自作の“顔出し看板”をパーティーに持ってきてたんですよ。

——顔出し看板ですか!?(笑)

美浦: 自分はお酒を飲まないので、パーティーに何を持っていったらいいかわからなくて。ちょうどその頃、遊びに行った先々で顔出し看板をよく見かけたんですね。それで「そうだ!顔出し看板を作って持っていったらええやん!」ってなって、作っていったんです。割と評判よかったです。

——発想がすごいですね! クリエイティブ! いきなり右側っぽいです(笑)。

ツキト: めっちゃクオリティ高いんですよ。その後も議員さんの事務所の顔出し看板作ったりして。

美浦: ツキトくんから鶴橋の市場の顔出し看板を作ってほしいって頼まれたのが、初めてのオファーでしたね(笑)。

ツキトさんが依頼し美浦さんが制作した、鶴橋鮮魚市場の顔出し看板

——さっそくですが、美浦さんはツキトさんから見て「右下っぽい人」ということで、今日この場にいらっしゃいますが、ご自分でもそう思われますか?

美浦: とりあえず、「右下っぽい」ってなんやねん!とは思いましたけどね(笑)。そうですねー、個人的には右上に行きたいんですけど、気付いたら右下におるんですよねぇ。それが歯がゆくて・・・。

——バリバリ稼いで右上を目指したいって意味では、ツキトさんと美浦さんは近いんですね。

ツキト: 右上やら左下に行っちゃった方が楽やけど、右下で闘ってる人たちを紹介したいって感じなんですよ、ここここは。

美浦: ほー。右上で結果を出した人が、右下に行くのが、一番理想的というか、それに憧れてる人って多いんちゃいますかね? キングコングの西野亮廣さんとかも、右上でしっかり稼いだ後、右下に来てる感があったりしますよね。

——あー。そういう人もいますね、確かに。

美浦: 最近いろんなことを「8:2」の法則で考えてみるんですけど、その考えでいくと世の中のほとんどの人が右下ではないんですよね。右下も2割くらいしかいないのでは?でも、そう考えると、他の8割の人にアプローチしていく方が数が圧倒的に多いので効率的ですよね。右下以外の3つの領域の人たちって、右下の人が感じてるような事は意識してないんじゃないかなと・・・。

——思考停止とまでは言わなくとも、「あるものに乗っかってる」感はありますよね。

美浦: そうそう。なので、8割に対して「こんなことやってみようぜ~」とかって言っていく方が、効率が絶対にいいと思うんです。

——ここここはまさにそれをやりたいんです! ご自分では、この図のどこらへんだと思いますか?

美浦: ここ!(ど真ん中)

ツキト: あ。市場がかぶってしまいましたね(笑)。  ※ツキトさんも自覚は「ど真ん中」

美浦: そんなにどっぷり右下ではないと思います。他の3つとも接してるというか、未練があるというか。なんかね、ずっと右下にはいられない。

——いわゆる「エスカレーター理論」ですよね。座談会でも、気付くと市場経済の仕組みに乗っかって下から上へ向かう縦軸エスカレーター的な世の中の動きと、革新的と思われていたことも時代の流れと共に古くなっていく右から左の横軸エスカレーター的な動きがあるのではないか、右下であり続けることにはふんばりが必要なのではないかという話をしていました。

※参考:第1回ここどこ座談会

美浦: なるほど。ローカルメディアを始めていろんな人と会ったんですけど、結局みんなお金にたどり着くんですよね。NPO で やってても、趣味や副業でやってる人でも、そこがみんなやっぱりネックになっているし、興味のあるところで、年間何百万単位で切り崩してやってます、みたいな話も聞いたことがあるんですが、そんなケースってできる人自体がすごく限られるし、僕なら無理やん!とも 思いますし。
やりたいことやるってのは、やれる環境をつくるのがまず大事だと思います。独身と結婚してる人では違うでしょうし、子供がいる、いないでも違うと思います。価値観って、結婚したり子どもが生まれたら変わることも多いと思うんですよ。変わっていく中でパートナーの価値観と、自分の価値観とにどう折り合いをつけるかですよね。普通に考えたら右上を望むでしょうし、僕の妻も現実的です(笑)。そこを突き抜けたら、また違うんやろうなとも思いますけど。

——「右下とお金」とか「右下と結婚」って、いくらでも話せそうなテーマですねぇ。

 

ローカルメディアを始めたのは「稼ぎたいから」

 

美浦: 最近、「自分、稼ぐ能力全然ないなぁ…」と思うんですよ。そろばん弾けないんです。スタジオジブリでいうと、宮崎駿さんタイプで「こんなんやったらおもろいな~」って言って進むのは得意なんですけど、「それ、どう採算とるねん!」みたいなところがあって。そのプロデューサー脳を手に入れるにはどうしたらいいか・・・って思っていて。稼ぐには、 鈴木敏夫プロデューサー的な人か脳が必要ですよね・・・。

——その役割は、誰かにやってもらうしかないんじゃないですかね! 城東じゃーなるは、本業なんですか?

美浦: いやいやいや。本業は、金属のリサイクル業をやってます。建築土木の現場で、3tくらいあるでっかいUFOキャッチャーみたいなのを搭載した大型トラックで、要らなくなった屑鉄を買取・回収・運搬する仕事ですね。その合間に、ネタ探して、取材行って、記事書いてます。

——おー! すごいですね!

美浦: でも、これ、誰でもできることなんですよ!  僕は勝手に「事実積み上げ型ローカルメディア」って言ってるんですけど、「見たまんま」なんですよ。

城東じゃーなる(愛称:JJ)のトップページ

——作業自体は誰でもできることかもしれないけど、実際にやるかどうかってまた違いますよ

美浦: それはつまり、一歩踏み出すことと、続けるっていうことですかね。僕も、もともと腰重い方なんで、いろんなハードルを下げていったんですよね。
始めたきっかけは、本業の親方が経費を僕に預けてくれて、「これ使って、お金を増やしてみろ」って言われたんですね。経費なんで、放っておいても月々出て行くわけで、1年以内に消化されてしまうぐらいの経費だったので、それなら何かした方がいいなと思って、何をしようと悶々と考えてたところに、十数年ぶりに地元の先輩と再会したんです。そしたら、その先輩がめっちゃ稼いでるアフィリエイターになっていて(笑)、その人がやっているアフィリエイト塾みたいなのに「これも何かの縁だから!」と思って入ったんですね。その先輩にもやめとけって言われたんですけど(笑)。

——そのタイミングで再会したってところにも、何か感じるものがあったってことですよね。

美浦: はい。でも、素人やから、飛び交ってる用語とかも全然わからへんくて(笑)、「これはあかん」って友人に相談したら、「そんなん、入ったらあかんやろ!」とか言いつつも、「こんなん知ってる?」って「枚方つーしん」っていうローカルメディアのWEBサイトを教えてくれたんですね。それを見たら、「え?これやったら、俺でもできるやん!」と思って、とにかく真似てやってみた。一歩のハードルを下げた上で、一歩一歩をほんのちょっとずつ稼ぐっていう感じで。そこに賭けたんですよ。

——なるほどー。それは・・・ええ話聞きました。

 

自分の住んでるまちが おもろくなったら最高!

 

美浦: 実際は、だいぶ悶々としてましたけどね。でも、やっていくうちに「編集上手いね!」って言われたりして、「いやいやいや、そのまんま載せただけですよ!」っていつも思うんですけど(笑)。やり始めた時から、やってることは何も変わってないのに、見てくれる人が増えると、周りの人が勝手にいろいろと言いはじめるんですよ。自分は何も変わってないし、「別に『城東区のために』とか一切考えてません」とか「お金が稼ぎたい!」って言い続けてるんですけど(笑)。「いや~、地域のために、ありがとう!」とかって言われて(笑)。何回も言うてるんですけど耳に届かない(笑)。「広告募集してます!」って打ち出してるのに、「ボランティアでね~、えらいわね~」って言われたり。自分の住んでるまちがおもろくなったら最高やんかっていうだけなんですけどね~。

——それ、めっちゃおもろいですね。見たい世界しか見てないんですね、人は(笑)。

美浦: 実は記事に対するコメントで一番多いのは、「知りませんでした!」なんですね。極端な話、その人の生活圏が、朝家を出発していつも右にしか行かないんやったら、左隣に新しいお店ができてても気付かないんですよ。それくらい、みんな知らないし、興味ないし、忙しいんです。だから、極力、ライトに、ポップに発信して「ほえ?」って感じで見てもらえるのがいいですね。知らないと、その人にとっては「存在してない」ということじゃないですか。そこを埋めたいって思いがありますね。

取材は、蒲生四丁目のおしゃれなギャラリー&ショップ「マニアック長屋」にて行いました。
爽やかでテンションの高い美浦さん。この日は「一日中人と喋ってなかったせいか、人に会うだけで嬉しくなってしまって聞かれてもないのにドドッと話してしまう!」とのことでした。
後半では、活動を続けるモチベーションや今後のビジョンなどにせまります。

後半へつづく

インタビュアー:徳田なちこ(取材日:2017年10月2日)

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