2017.09.24

Interview

ここここ|梅山晃佑さんインタビュー(前編)

自宅の住み開きから始まり、まちのいろんな場所を大学に見立ててワークショップや座談会をする「2畳大学」、いろんな人が自分の仕事を持ち寄って作業する「コワーキングスペース往来」。いろんな働きかたを提案したいと、仕事に関する情報をWeb上で紹介する「ナローワーク」。最初はちょっとした思いつきや遊びから始まった。どれもいまや梅山晃佑(うめやまこうすけ)さんが活動拠点とする谷町六丁目のインフラ的な存在として欠かせない。こんな人を探している、商店街の空きスペースで何かできないか、Webとまちを横断しながら周りの人のちょっとした困りごとや相談ごとに答える姿は、さながら町内会の世話役といったところか。

実は梅山さんの本職は、A´ワーク創造館(以下、Aダッシュ)という大阪の民間の職業訓練校のキャリアコンサルタント。そこで、求職者向けのスキルアップ講座を開いたり、就職や起業したい人の相談に乗ったりしている。数ある活動の中でも、今回は梅山さんが最も右下的だというAダッシュでのお仕事についてお話を伺った。

 

 

求職者に寄り添う支援とその矛盾

 

——Aダッシュではどんなことをするんですか。

梅山: 基本的には3つあって、企業から依頼を受けてマナー講座をやったり、自分たちで企画してパソコン講座をやったりする自主企画の講座。それから、就職したい人向けの公共職業訓練。これはハローワークで申し込んで給付金がもらえたりするやつですね。最後が生活困窮者の就職支援のような社会の課題や問題にアプローチするような講座ですね。

 

——3つ目のものは具体的にはどんなことをするんですか。

梅山: 当事者向けに面談したり、職業体験するためにどこかの企業に繋いだり、直接その人をサポートすること。それと、自治体の窓口をしている人に、どういう視点で面談したらいいかとかアドバイスしたり、仕組みや体制作りをサポートすることと2つありますね。

 

——対象とする人も仕事も、福祉的なものからコーディネーター的なものまで幅が広いですね。

梅山: はい、実際いらっしゃる人もさまざまですね。生活保護やその手前の人、障害を持っている人や10年引きこもっていたような、ちょっとしんどさを抱えた人もいれば、普通にずっと働いていて転職するのにスキルアップしようかなという人、起業したい人、会社が合わないから独立してフリーでやりたい人、コミュニティビジネスとかソーシャルビジネスとかNPOを立ち上げたい人と、広いですね。


講座内容は、基礎的なものから、実際の新人デザイナーが実際に企業から注文を受けて、商品企画を行うような実践的な内容のものまで幅広い

 

——実際そこで梅山さんはどんな仕事をしているんですか。

梅山: ほぼ全部関わっています。年度によって密度はそれぞれ変わったりするんですけれど。僕はキャリアコンサルタントの資格を持っているので、就労支援寄りに思われることもあるんですけど、自分では職業教育の方がしっくりきます。

 

——相談業務や講座運営もやるけど、プログラム作りの方に興味があると。

梅山: そうです。プログラムを作るとか、コーディネートするとかが、得意分野というか専門分野です。

 

——いわゆる一般的な就労支援の機関だと、こういう多様なひねりのあるプログラムは少ないと思うんです。こういった講座は梅山さんが関わることで生み出されてきたものなんですか。

梅山: ベースはもともとあったと思います。Aダッシュって、ちょっと立ち位置が変わっているんです。どちらかというと働く人の側の味方というか受講生寄りの視点なんです。

 

——他は違うんですか。

梅山: 職業訓練や研修をやるとなると、企業寄りの視点が多くなりますね。というのも、企業の人が求めるこんなスキルを持った人が欲しいという求職者象と、求職者側のこんな仕事をしたい、こんなこと勉強したいという希望はだいたいずれているので。だからどうしても企業のニーズを中心にしたプログラム作りになってしまう。

 

——ハローワークやなんかはどうですか?

梅山: もちろん、ハローワークやNPOがやっているような就業支援は求職者よりの視点を持っているんですが、Aダッシュは、相談だけじゃなくて実際に研修とかプログラムまで提供しているという意味で、研修会社やハローワークとは違ったちょっと特殊な立ち位置かなと思っています。

 

——そうしたら梅山さんは、企業の意向も聞きつつ、個人の意向に寄り添いながらアドバイスなりプログラムを立てていくという立場なんですね。実際やってみてどうですか。

梅山: けっこう難しいですよ。常に矛盾ですよ。本人はやりたいけど、企業からは全然求められてない講座とか。みんなはすごくやりたいという講座をやっても、全然就職ないな、みたいなこともありますからね。


求職相談はその場限りとなるだけでなく、長くその人の人生に関わるような場合もあるそうだ

 

 

働きかたも採用活動も右下シフトの時代?

 

——右下らしさに置き換えると、競争力をつけて企業の言うことを聞けるような人材を育てようというのが右上にあるとしたら、個人の持っている能力を発達させて企業のニーズとマッチングみたいなのが、右下的な感じですか。

梅山: そうですね、ニーズに合わせるのも個人の希望や能力を生かすのも、どっちも大事やなと思うので。それは右下らしさ特徴の一つかなと思いますね。

 

——企業に添わせるプログラムでありながら、個人の意向も組み込むための工夫とか戦略はあるんですか。

梅山: 一概には言えませんが、入り口はなるべく本人の希望に寄った形にしていることが多いです。講座のタイトルや種類は、受講者が受けたいと思うような感じに、意識して寄せています。企業が喜びそうな講座のタイトルはあまりつけないとか。その上で、その人たちが単におもしろかったって終わらないようにするために、中身で工夫するんですね。時には受講生からこんなん求めていた内容じゃないとか、反発が来ることもありますけど、僕たちも実際の企業はそうじゃないと割と強めに言うこともありますし。なるべく、ずけずけ関わっていくみたいな気持ちは持ちながらやっていますね。

 

——梅山さんはほかにもいろいろな活動をしていますけど、どうして今回はAダッシュの話がいいと思ったんですか。

梅山: 就労支援や職業教育は考え方が割れやすいなと思って。職業訓練のプログラムでも、こういう職業にはこういう知識とかスキルが必要だから教えましょうみたいなガイドラインがありますよね。それはわかりやすいんだけど、実際、本人たちはそれぞれ過去の仕事とか過去の経験とかいろいろなことがあって来ているので、単にそのまま学んで就職できるかと言ったら、そうでもない。実際に過去のことを解決しないと先に進めない人もいたりとか、過去のことを断ち切って来ている人もいるけれど、案外それを踏まえた上でやった方が、新しい道があったりすることもあるから。

 

——右下っぽさと働くことでいうと、昔は労働組合があったり補償が手厚かったりして、多少仕事を辞めても安心な部分があったのが、自己責任と言われるようになって、仕事を辞めたりするのも、個人が弱いからだとか、能力がないからだみたいな言い方をされますよね。そのような労働者の権利が大事だ、みたいな方向性と、自己責任とか能力みたいな方向性があるとして、梅山さんが働いている現場ではどういう立場を取っているんですか。

梅山: 今ってやっぱり……徹底的に即戦力でないとダメという傾向がとても強くて、求職者とのギャップがものすごく激しいんです。人を探しているけれど誰かいませんかと、いろいろ企業さんから問い合わせがよくあるんですけど、全然人が来ないんです。でも、職にあふれている人もいっぱいいるんです。
ずっと「この感じなんやろうな」と思いながら、でもこういう状況はもっと激しくなるやろうな、という実感だけはすごくあって。なんかうまいこと言葉にできないんですけれど。

 

——そういうことをどうにかしたいみたいな気持ちがあるんですか。

梅山: 結論を言うと、僕自身の考えとしては、求めているような人はなかなかおらんから、求人活動にかけるコストを育てるコストに変えた方がいいと思っているんです。スキルや能力や経験はないけど、「真面目やしこの子ならいいか」という子を先に会社に入れて、その人をちゃんと育てる方が絶対コストは安上がりや、という。

 

——はい。

梅山: 誰もが行きたくなるような有名な企業やったら別ですよ。でも、普通の中小企業みたいなところで、めちゃ尖ったことしているとか、メディアに取り上げているような会社ではない限り、そう人は来ないんで。だったら、人はいないのにひたすら餌を撒き続けるより、先に良さそうという人を育てるような仕事をしたいなと思っているんです。例えば、企業とか組合とかと組んで、うちに来ている人たちの中から良さそうな人を選んで紹介するとか、学校みたいなところを作って、そこに入れるようなことをしたいなと思っているんです。


西成区の靴職人の団体から、靴の底を作る職人が減っているという話を受けて、養成学校も計画中とか

 

後半へつづく

インタビュアー:太田明日香(取材日:2017年7月17日)

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