2017.09.25

Interview

ここここ|武田緑さんインタビュー(後編)

「ここここ」運営メンバーのひとり、武田緑さん。 記事後半では、教育者を支援するNPOを始めたきっかけや、その教育観、そして右下っぽさに、せまります。

 

自分の頭で考えることの大切さを体感

 

——コアプラスは、今何年目くらいなんですか?

武田: 大学3回生の時につくって、今年でちょうど10年目ですね。でも、最初は学生団体に毛が生えたような、やりたい時にやりたいことだけやるみたいな感じでした。ゆるゆると続けてきて、気づいたら10年ですね。法人化したのは 2013 年です。

 

——そもそも、教育のNPOをやろうと思ったのはなぜだったんですか?

武田: 私、教員志望の学生やったんです。なので、周りには、同じ教員志望の学生がたくさんいたんですけど、周りの教員志望の学生の捉えてる「教育」というのが、すごく狭いなぁと思っていて。今まで自分が受けてきた学校教育の考え方とかスタイルとかを大前提として、その枠の中で「いい授業の作り方」とか「わかりやすい説明の仕方」とか「綺麗な板書の書き方」を考える・・・といったような努力の仕方だったんですね。もちろんそれは現場に出れば必要になってくるんですけど、「学校って何するとこなん?」「学ぶってどういうことなん?」っていう「そもそも」を、あまり考える機会がないなぁと思っていました。

 

——言われてみると、そういう学生さんは多そうですね。教員志望に限らず。

武田: 私は、大学1回生の時に、ピースボートというNGOが企画する「地球一周の船旅」という国際交流の船旅に参加して、3ヶ月間で、約1000人の人たちと船の上で生活を共にしながら、14 ヶ国・16の港をめぐったんです。


「地球一周の船旅」で南アフリカを訪れた19歳の武田さん。

 

——へぇ―!それはすごい。

武田: 自分の中で、それが、すごく濃密に学ぶ機会になったというか、それまでもいろいろ考えて生きてきたつもりで はあったけれど、「自分の頭で考える」とか「違う立場・違う意見の人と話す」とか、「話した後に、また自分の頭で考える」ということが、あまりできてなかったんやな、という気づきがあったんです。

 

——それは、船の上でですか? どこかの国でですか?

武田: 寄港地での学びもありましたが、主には、船の上でですね。ピースボートって、さすがに1000人近い人が乗っているので、本当にいろんな年齢・価値観・社会的立場の人がいるんです。交流のきっかけになるようなイベントごとがいっぱいあって、本当にいろんなトピックについて、話をする機会もたくさんあるんですよ。気軽なしゃべり場のようなものから真剣な議論まで、雰囲気もさまざまに。


船の上での運動会の1コマ。ピースボートの洋上には本当に多様なバックグラウンドの人が集っていた。

 

——それは、すごく面白そうですね。

武田: はい。私は、人権教育が盛んな地域で育ったマジメかつ正義感のある学生やったので(笑)、そのコミュニティの中ではいわゆる優等生だったんですよね。自分のいる環境には安心しつつ、その外側の社会一般に対しては「なんやねん、世の中!」って憤る・・・みたいな子だったので、社会的なトピックについて、自分なりに考えてきたと思っていたんですけど・・・。

 

——実はそうでもなかった?

武田: そうですね。意見表明することも推奨されて育ってきたので、船の上でも「自分はこう思う」ということを言うようにしていましたが、けっこういろんな方向から反論される、というようなことが多くて。議論の前提の情報の偏りを問われたりして、「え・・・そうなんだ・・・」ってなったり(笑)。 そういう経験を経て、大人の受け売りでいろんなことを鵜呑みにして生きてきたんやな、というのが分かり、それが、自分の今まで受けてきた教育や育ってきた環境について考えるきっかけになりましたね。

 

——素直ないい子やったんですね。

武田: ピースボート以外にも、同じようなことを感じる機会が重なって、「自分の頭で考える」とか「違う立場の人と話をする」とか「情報を自分で確認する」とか、そういうことが本当に大事やなって思うようになりました。大学卒業後に、公立の小学校で教員をしていた時に現場の大変さを身を持って体験したことも、コアプラスにつながっています。

 

 

その人らしい教育方法が、一番伝わる

 

——多くの人が、自分の生まれ育った環境で身につけた価値観について、どこかのタイミングで「あ、狭い世界だったんだな」と気づくものだと思うんですが、教育に関わっている身として、どのくらいの年齢でそれができたら・・・という理想はありますか?

武田: もっと子どもの時から、地域や学校で、自然に様々な価値観に触れられるといいと思います。教室の中でも価値観の多様性や対立みたいなことが表現されている方がいいと思うんですよね。ほんまは、教室の中も多様なはずです。もっと、意見が分かれるようなことをみんなで話すとか、「友達と意見が違っても大丈夫なんや!」「友達と意見が 違っても友達でいられるんや!」みたいなことは、小さい頃から学んだ方がいいんじゃないかな、と思いますね。今は、選択とか判断が友達と違うということが「やばいこと」みたいな感じがすごくある。それは、解消したいと思っています。

 

——その教育観が、けっこう「右下っぽい」のかなと思います。多様性を大事にするって、割と右下っぽい考え方ですよね。でも、その「多様性」の中には、他の3つ(左上、右上、左下)も含まれているわけで・・・。他のポジ ションの人たちは「いや、こうあるべきだ!」みたいのが強いのに対して、右下は「まぁ、それぞれあるよね、それもありなんじゃない」と言う人も多いような気がするんですが、どうでしょう?

武田: たしかに、そのややこしさみたいなのはありますね。 自分たちの考えを推し進めたいのか、それとも全体をどうするかという話なのか・・・これは、今後いろんな人に も話を聞いて、掘り下げていきたいところですね。
私も、「一斉指導は完全に悪だ!」みたいな時期もあったんですが、今はあまりそういうふうには思っていないんです。もちろん、一人ひとりの子どもに合わせることはものすごく大切ですが。でも、大人のその人らしい表現をしている姿を見せることが、結局子どもに伝わっていくと思うので。

 

——ほう!

武田: 子どもたちを抑圧しないということを前提にしての話ですが、その人の教育観に則った教育スタイルとか、その人の個性に引きつけた授業の方法や関わり方で関わるのが、一番子どもたちにインパクトがあるかなというのが、いろんな教育と出会ってきた中での、私の持論です。


コアプラス法人化一周年記念パーティーでの集合写真。コアプラスがつなげる人の輪は、ゆるやかに、確実に広がり続けている。

 

——へぇ―!

武田: 自分の教育観と教育スタイルがちゃんと一致している状態、つまり、教育者自身が「自分が自分である状態」で子どもと接する、ということですね。そこが一致してる時に、「伝えたいこと」は「伝わっていく」のではないかというのが、私の 今思っていることです。その中には一斉指導の授業も、あってもいい。とはいえ、個別化の流れは必然的に進んでいくと思いますし、大人が常に「これでいいのか?」と振り返りを続けている、ということがこの話の大前提ですが。
それから、スキルが気持ちに追いつかない、といったようなことはあるので、それはスキルを引き上げていく必要があります。

 

——なるほどー。うまく言えないけど、すごく「右下っぽい」です!!(笑)

武田: 子どもの人権を侵害するようなことをしない、子どもの最善の利益を追求するのは前提として、「ルールだから」とか「今までもこうだったから」とかではなく、きちんと自分の頭で考えて決めるということ、その人が自分の教育観を表現できる方法を身につけていくということが、何より大事やと思います。
「右下っぽい授業」とか「右下っぽい教室レイアウト」とかも、あると思いますよ(笑)。でも、全員がそうすればいいとは思わないかな。絶対数が少ないので、選択肢としてもっと広まったらいいなとは、すごく思いますけどね。

 

 

左下と右下の橋渡し

——最後に、右下っぽいということで今日この場にいらっしゃいますが、自分でも「右下っぽい」と思われますか?

武田: そうですね。他のところと比べたら、完全に右下っぽいんじゃないでしょうか。でも、この図で言うたら、このへん (右下の中で、左側寄りの上下軸ど真ん中)やと思います。


それぞれの領域の中でも、自分がどのあたりに位置するかを考えるのは、楽しそうだ。

 

上下軸でいうと、下に行き過ぎると、社会と隔絶するようなイメージがあるんですよ。もちろん、ベースになるコミュニティがあっていいんですけど、社会と隔絶したらあかんのんちゃうかなと思っているので、真下の方じゃない理由はそれですね。あと、右上の人たちとはちゃんと対話した方がいいと思っていて、できるとも思っています。
私はやっぱり、橋渡しのようなことをしたい欲求がありますね。左下のコミュニティ育ちで、左下でやってきたこと (旧来の人権運動や社会運動など)は大事やったと思ってるんですけど、それがもう立ちゆかなくなっていて、なかなかどうしたもんかな、と感じています。左下で育まれてきたものを大切にしつつ、左下の人を右下の方に寄せる、みたいなことをしていきたい。また、右上の人にも、右下もあるよ!って言いたい(笑)。 左下や右上とコミュニケーションが取れる位置にいようとする、というのがありますね。地域活動も、左下の文脈にも 「ふんふん、そうですね」って乗りつつ、対話しつつ、右下の良さも伝えていくというイメージで関わっている気がしています。

 

——武田さん、ありがとうございました!
インタビュアー:徳田なちこ(取材日:2017年7月17日)

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