男3人で福島で暮らしている、平田さん、仲村さん、乾さん。
前編では、3人の出会いや暮らすことになったきっかけを話していただきました。
後編は「右下っぽい」という切り口で、自分たちの生活をどう思っているのか、3人を紹介してくださった市川ヨウヘイさんも交えて聞いていきます。
——こここことして、自分たちの活動を右下っぽいと思うのか?ということをみなさんに質問したいです。目指すものでもいいし、現状でも良いのでお願いします。
せーの!!
乾: 右下の、真ん中らへん。
革新という感じではないけど、今のままだと違うなーという気持ちはある。けど競争はとても苦手。一緒にいてできることがあるなら、やったらいいよねという気持ちはあるので、だから真ん中くらいかなと。
平田: 普段は役所で働いているので、仕事はめっちゃ保守なほう。
でも個人的には逆だし、こっちにいけたらなと思ってる。あとは、個人でやれるのって限りがあるし、誰かと何かをやっていることのほうが楽しいので、だから少し下でこの場所。
仲村: 自分ひとりの考えで行動してこっちにしよう!っていうのはないけど、自分がいいなと思うことにあわせることは多いので、ここかな。
「君ら、みんなで暮らしたらええやん」って言われてなかったらやってないですし。僕ら3人だけだとおそらくやってない。映画祭でも、映画たくさん見てるんやったら流す映画を選んでって言われてやってたから、他人からの「こんなん得意ちゃう?やってみたら?」というのには流されやすいのかも。
あえて外からの無責任なものに乗ってみるというか。笑
でもそれでタイにもいけたし、考えすぎないのも行動しやすくてよかったなーと思います。
——「赤信号、みんなで渡れば怖くない」とか「今年のファッションの流行りはこれ!」というようなものに流されるのではなく、自分の行きたい方向に「この指止まれ!」的なものを見つけて行く感じかもしれないですね。
仲村: 自分の信じるチャンネルを持つという感じかもしれません、僕にとってツイッターとかはそんな感じです。
乾: シェアハウスが決まった場所にはいなかったけど、あとから乗っかった身としては、その気分を味わったことがない方を選ぶようにしています。学生時代に部活とかも入っていなかったので、すごく長い時間人といるっていう経験がない。その気分はわからないからやってみようかなっていう感じです。
流行の服も、着たことなかったら買うかもしれない。
——3人の食べ物の好みって合うんですか?3人で食べに行くこととかは?
仲村: 他の人が混じった状態はあるけど、3人だけは少ない。
平田: 僕と仲村で飲みに行ったりは時々。
乾: 仲村さんと僕で見たい映画が一緒やから行こう、ついでにお昼ご飯食べようとかはありますけど。
3人のみは1回だけで、家の中での食事も一緒にしなくて、それぞれです。
平田: 朝も家を出る時間が違うから、シャワーとかトイレがかぶらないっていうのはいいです。
——合わせていくのはしんどいので、最初から合わせないって決めているからいいのかもしれないですね。
平田: あとはお互いが気を使っているのはあるかもしれないです。今の時間帯、あいつが~~してるな、とか言葉をかけずにわかってくるようになる。
仲村: 最近見た映画で、「きみの鳥はうたえる」という男二人のルームシェアの話があるんですが、片方が冷凍庫とか開けっ放しにしていて、もうひとりが「あいてるよ!」ってちょっと怒った感じで言うんです。それに対して、「ごめん」って言ったら、「いいよーー」って言う。そこまでの感じまでいかないけど、そういう気持ちは持っている。
平田: いいよーって自分も思っていかないとね。
僕もきれい好きな方やと思うんですけど、みんなの基準が違ったらそこに合わせていかないといけない。それは下げなあかんって思ってるし、お互いにあんまり期待しないというか。最初はいろいろ言ってたりもしたかもしれないけど、期待しても自分がしんどくなるだけやなって思ってそういう方になってきました。
市川: 3人が全員、家から出ていってるのがいいと思うんです。
一人がずっと家にいてる生活だとまた話がちがってきて、一人でも在宅の仕事をしてたりとかするとイライラすることが増えると思う。
あとは、3人が困って寄り合っているわけではないのが大きいかなと、物事に困って人は集まるという側面も多くて、それが原因で抜け出せなくなったりするんですがそれがなくて、次に行けそうな感じが残っているのがいいなと思います。
映画祭で集まったのもまずは興味があって来てて、それがとどまるわけでもなく流れていって、違うところでまた集まって今のシェアハウスがある。この感じはシェアハウスが終わっても続いて、また違う形になりそうな気がします。
——2年だとあと残り1年を切ってるわけですが、もう少し延長してみようとかいう話はあるんですか?
平田: わからないです。もしかしたら他の2人は思ってるかもしれないですが、僕は2年でいいかなって思ってます。僕の代わりに誰かが来るってなったらそれはそれで全然いいですし、個人的に嫌になったとかではなく別のところにいってもいいかなと思っているという感じです。
福島はいい街なんで、その気持ちよさがなくなるのは残念なんですが。
市川: 近くに住んで入り浸っているかもしれない。部室に遊びにくる感じで。笑
——その感じがいいですね、うらやましいです。
乾: こういう感じで、生活の話をするのは楽しいですね。
平田: 他の記事を見てたらがっちり活動している人が多かったので、家事の分担の話とかでいいのかと思っていたけど。
仲村: めっちゃ当たり前のことを、面白がってくれるから。
乾: 僕らが用意した面白さではないんですけどね。
2人に個人的に聞いてみたかったことがあるんですけど、いいですか?
この場所に集まった目的はないという話は今までにもしてたんですが、おまけ的なことはあるのかなと思って、この家に住んでいるうちにできた新しい趣味ってあるんですか?趣味じゃなくても、癖とか、暮らし始めてから変わったこととかでも。
仲村: 乾くんがリビングでYouTubeをみるんですけど、フリースタイルダンジョン(※)をめっちゃ僕に説明してくれて、聞くようになったっていうのはあります。
※『フリースタイルダンジョン』(FREESTYLE DUNGEON)は、テレビ朝日にて、毎週水曜1:29 – 1:59(火曜深夜)に放送中のバラエティ番組である。フリースタイル(即興)のラップバトル番組。
乾: 僕は、漫画かもしれないです。仲村さんがめっちゃ漫画買うので、全然読まなかったジャンルの漫画を読むようになりました。最近だと、SFのサザンおすすめされましたけど、個人的にドハマリしたのはpanpanyaです。夢系漫画っていうジャンルがあるのもこの作品で知りました。
仲村: 夢なのか現実なのか判断がつかない、というやつです。つげ義春とかもすごく好きなので。飲みに行って「最近何読んでるんですか」って聞かれてすすめたのかな。
——これは平田さんも読んだんですか?
平田: 全然読んでないです。
仲村: この話もしてないと思います。笑
平田: 僕は影響された趣味はないかな、料理楽しいなって思うけど。
仲村: めっちゃ時間かかってるんです。映画をリビングで見てて、平田帰ってきてご飯作り出したなーというのを感じるので、リビングで食べるんやったら映画見るのをやめないといけないかも、、と思ってから1時間ぐらいずっと作ってる。
平田: それは、仲村が映画みてたら、逆に来ないようにするときもある。映画みてるときに遮断される気持ちもわかるし。
乾: 無言で察し合う感じ。シェアハウス、してますね。笑
仲村: あとは乾くんにどこの店がいいとか聞きやすくなったのはあります。
乾: 趣味と仕事で詳しいので。
仲村: でもわざわざラインで聞くほどでもないので、たまたま夜寝る前に階段のところでとか。
乾: 階段がほんまにたまり場です。笑
市川: こういう感じで、お互いがお互いを気遣い合うというのがしっかりとあるんですよね。イベントとかの旗振り役をするとかではないんですが、僕はこれを「事務局のクリエイティビティ」と呼んでいます。事務局には、物事を早く行うとか、発想を持って眼の前のことをこなしていかないと行けない。それぞれが、今は誰かがこれをしているから、自分はこっちをしておこう、という感じで対応力がとても高い、そんな3人なんだと思います。
——”静”と、”動”でいうと、静な感じですね。でも十分に活動的。
よく「ものづくりの人たち」とか「アーティスト集団」というようにくくってしまう良し悪しがあるんだと言われた気がします。括ることで生まれる化学反応みたいなのもあるけれど、そうじゃなくてもいいという。
市川: 結局みんなこの場所以外の「外」があるのがいいと思うんです。友達がいるとか、職場に行かなくてはいけないとか。あとは、男3人で暮らしたら、もっとむさっとした男臭い場所になると思うけど、それもない。
——この距離感が面白いですね、そしてそれぞれの調整能力が機能している。
「シェアハウス」と言うと一般的なものとは違うけど、ただの同居人と言い切りすぎると遠い気もする。暮らし方のスタイルの、こうなるといいなという形の1つですね。名前がつけにくいし、形になる感じでもない。
平田: 最初名前つけようとしてたけど。つけられへんな、ってなりました。何かをやってるわけでもないし。
乾: 屋号も、つけたら逆に首を締めてしまいそうな気がすると思って。安直につけてしまって、あとから考えたらダサいとなったら地獄ですしね。今思うと、思いつかなくてよかった。笑
この生活のことを話すときも、「たまたま3人で福島に住んでたときがあって、、」という言い方がいいなと思います。
男3人で福島で暮らしている人たち、をインタビューするという話を聞いた時、その人たちは何をやっている人たちなんだろうと思っていた。今回のインタビューを通して、何かを掲げて活動しているわけではないけれど、そうじゃなくて成り立つ関係、暮らしのあり方を知ることができた。
インタビューの随所に現れる市川さんのコメントが、この3人の暮らしの面白さを客観的に際立たせている。
平田さん、仲村さん、乾さん、並びにご同行くださった市川さん、ありがとうございました。
インタビュアー:奥井希、森川真嗣(取材日:2018年10月14日)