2017.09.25

Interview

ここここ|梅山晃佑さんインタビュー(後編)

右下と再チャレンジ

——会社に一回入ったら年功序列で出世して、辞めるまで終身雇用みたいなのが左上として、逆に昔のソ連みたいな仕事がある代わりに、みんな給料同じでというのが左下として、時代の流れは右上の競争主義、実力主義で業績を上げないとどんどん切られる方向に行っていますよね。
そういう時代の中で、学校を作ったりすることで、元から経験や技術がなくても就職ルートができるとか、新しく手に職をつけることで、一旦右上っぽい流れから落ちてしまった人でもまた就職できるというのは、非常に違う流れができている感じがします。

梅山: 実際、Aダッシュでもそういうプログラムもやっていますね。例えば数年前になりますが、生活保護を受給中の人たちへ、大阪市から委託を受けて就労支援をやったりとか。大変な部分もあったんですけど。

 

——と言うと?

梅山: そういう人たちの大部分は障害があるわけでも、高齢者でもない、40歳以下の若年層が多くて、働けそうに思うじゃないですか。でも、これまでの家庭や学校などでの生育環境の中で、希望とか自信が持てなくなっているんです。求職者と同じ内容の講座をやっても、本人に希望や自信があるのとないのとでは、効果や習得度が違ったりして。

 

——そうなんですか。

梅山: ただ、講座に通うことで他の自分よりしんどい人を見たり、職員が楽しそうに働いているのを見て、考えが変わったという人や、ちゃんと独立したいと思って就職して生活保護を切った男の子もいて。授業やクラスで人と関わることで変わることもあるので、そういう可能性に期待したいなと思っている部分もあります。やっぱり、そういう希望を持てないみたいな人は世の中にたくさんおるんで、その状況はすごい変えたいなと思っているんです。

 

——就労支援というと、学校を作ってプログラムを受けたら自動的に就職できるみたいなイメージがありますけれど、もうちょっと抽象的な仲間作りであったり、周りの人とのやりとりの中で本人が自信を持って、社会に出て行くための準備をするみたいな部分があるんですね。

梅山: そうですね。場合によっては、そっちの方が重要かも。それに希望や自信が持てないと一言で言っても、ほんとはそれぞれに質が全然違うんです。本人がどんな世界観を生きているかということを丁寧に考えないといけないと思っています。
そこに、従来型の画一的なアプローチや枠組みでは絶対に対応がしきれないんですよね。さっきの受講生寄りの視点というのは、ある意味では時代の最先端の声なんじゃないかって考えることもできるな、とも思っています。リアルな今の声に合わせた対応をすることが、結果的に就労などに結び付きやすいと感じています。

 

——たしかにそうですね。

梅山: あと、働く時間って、人生の中でめっちゃ長いじゃないですか。働くってことは、勤めようが勤めまいが、時間が長い分だけ、その人の考えとか価値観みたいな世界観に影響を与えることもすごく大きいので、お金以外の面でも影響が多々あるから、今の時代は特に誰しもが仕事ということをもっと大事に考えなあかんなと常々思っているんですよ。

 

 

「好き勝手」を実現しようとしたら右下になった

 

 

——梅山さんご自身は自分で右下と思いますか。

梅山: 僕自身は多分このあたり。でも、ときどき右上に行くこともあります。さっきの就労支援事業で結構厳しい環境で育った人を見ると、自己責任って言われへんな、と思うこともあるし、僕自身も右下寄りの価値観を持っているんですけれど。でも一方で、ある程度環境が整えられていたりしているのに自分で何かをやりたいと言ってもチャレンジをせずに、誰かのせいにしたり文句ばっかり言っている人をみたりすると、知らんわと思ったりすることもまぁまぁあるので。

 

——ちなみに、今回のAダッシュの話と梅山さんがいろいろやっている他の活動は、関係がありますか、それともまったく別のことですか。

梅山: 一番中心にあるのは、いかに好き勝手に生きるかっていうこと(笑)。みんなももっと好き勝手に生きたらいいのに、というのはすごくベースにあって。好き勝手というのは傍若無人にという意味ではなくて、自分の納得いくようにということで。仕事は人生の中で大きな時間を占めるから、好き勝手やったらいいと思うし、したいことが仕事の中で実現できるならやったらいいし、仕事やりながらやるのがいいのならそうやったらいいし……。

 

——お金との兼ね合いはどうでうすか。お金がもらえて好きなことができたらいちばんいいですけど、そういうことばっかりではないですよね。梅山さん的にはお金もらえる、もらないは置いておいて、というのはあるんですか。

梅山: そうですね。と言っても生活していかないといけないので、生活していくための手段は、やりたいことベースで選んだらいいやんって思いますけど。それが例えば、会社としてやらんと成立しないなら会社起こせばいいし、どっちでもいいという感じやったら、働きながらやればいいし、やりやすい環境をどう作るかですよね。

 

——右下の人は、いわゆる仕事と仕事じゃないものの間に、あいまいな領域を持っているような人が多い気がします。

梅山: 一言で言うと、「欲張り」というのはあるんじゃないでしょうか。矛盾することを両方実現したい、そういう意味での欲張りさがあるな、と。お金も欲しいし、やりがいも欲しいみたいな。Aダッシュでやっていることも、そういう意味では欲張りで、本人のやりたさとか、自己実現みたいなのも大事にしたいし、企業の意向もないがしろにせず大事にしたいってことかもしれませんね。

 

——梅山さん、ありがとうございました!

インタビュアー:太田明日香(取材日:2017年7月17日)

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